奈良地方裁判所 平成元年(わ)342号 判決 1992年4月22日
本店所在地
奈良県磯城郡田原本町大字為川南方二八番地
大和川紙工株式会社
(右代表者代表取締役 春山正智)
本籍
大阪府東大阪市中石切町四丁目二番
住居
大阪市天王寺区上本町九丁目二番七-九〇七号
会社役員
春山正智
昭和一四年九月一九日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官中田和範出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人大和川紙工株式会社を罰金一、三〇〇万円に、被告人春山正智を懲役一〇月にそれぞれ処する。
被告人春山正智に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人大和川紙工株式会社(以下「被告人会社」という。)は、奈良県磯城郡田原本町大字為川南方二八番地に本店を置き、紙管の製造、販売及び包装資材の販売等を目的とする資本金六、九七五万円の株式会社であり、被告人春山正智(以下「被告人」という。)は、被告人会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告人会社常務取締役本田博久らと共謀の上、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の仕入れを計上するなどの方法により所得を秘匿した上、
第一 昭和六〇年一〇月一日から同六一年九月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一億五、一四一万三、一〇三円(別紙一修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同年一一月一九日、奈良県櫻井市大字粟殿一八五番地の四所在の所轄桜井税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八、九六七万〇、五五三円でこれに対する法人税額が三、三六七万五、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額六、〇三九万円と右申告税額との差額二、六七一万四、四〇〇円(別紙三脱税額計算書参照)を免れた
第二 昭和六一年一〇月一日から同六二年九月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一億九、四六一万三、九三一円(別紙二修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同年一一月二五日、前記桜井税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億〇、二九二万八、八九六円でこれに対する法人税額が三、九一六万三、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額七、七六五万五、六〇〇円と右申告税額との差額三、八四九万二、四〇〇円(別紙四脱税額計算書参照)を免れた
ものである。
(証拠の標目) (括弧内の算用数字は検察官請求の証拠番号である。)
判示事実全部について
一 被告人春山正智の当公判廷における供述
一 第一回公判調書中の被告人春山正智の供述部分
一 被告人春山正智の検察官に対する供述調書三通(83ないし85)
一 被告人春山正智の大蔵事務官に対する質問てん末書六通(77ないし82)
一 大蔵事務官作成の査察官調査書三〇通(8ないし37)
一 本田博久(三通、72ないし74)及び高村義光(二通、62及び63)の検察官に対する各供述調書
一 春山貞子(二通、75及び76)、本田博久(八通、64ないし71)及び高村義光(六通、56ないし61)、園畠昇(55)、小林忠夫(54)、田村功(53)、安宅木善弘(52)、峯昭三(51)、下林哲一郎(46)、谷口佳紀夫(45)、宮下富代茂(44)、豊川浩茂(42)、及び吉田俊雄(三通、38ないし40)の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 福崎徳七(50)、今井康夫(49)、野嵜豊子(48)、下林哲一郎(47)、谷山泰庸(43)及び上田博文(41)作成の各供述書
一 検察事務官作成の捜査報告書(92)
一 奈良地方法務局田原本出張所登記官作成の登記簿謄本(2)
一 被告人会社作成の定款の謄本(3)
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和六一年九月期に関するもの、4)
一 山口忠芳作成の法人税申告書の謄本(昭和六一年一一月一九日申告のもの、6)
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和六二年九月期に関するもの、5)
一 山口忠芳作成の法人税申告書の謄本(昭和六二年一一月二五日申告のもの、7)
(法令の適用)
被告人春山正智の判示各所為は、いずれも刑法六〇条、法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一〇月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。
更に、被告人春山正智の判示各所為は被告人会社の業務に関してされたものであるから、被告人会社については、法人税法一六四条一項により判示各罪につき同法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告人会社を罰金一、三〇〇万円に処することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 田中昌利)
別紙一
修正損益計算書
<省略>
別紙二
修正損益計算書
<省略>
別紙三
脱税額計算書
<省略>
<省略>
軽減税率適用所得金額及び受取配当等の益金算入額の計算(措法42、42の2)
<省略>
法人税額の計算
<省略>
別紙四
脱税額計算書
<省略>
<省略>
軽減税率適用所得金額及び受取配当等の益金算入額の計算(措法42、42の2)
<省略>
法人税額の計算
<省略>